アクアマンセブン    05.20.2007
ああ、また、大ハズレ。
会った瞬間、あちゃーーーーと思った。
目の前に立っているお兄さん(かオジサン)が、ネットのプロフィールに載ってる写真と
大違いだって事に、今更ながら大落胆。

いやね、なんとなくそうは思っていたんだけどね。女の直感で。

そのまま、お兄さんの油ギッシュな顔と、これまた油ギッシュに横撫でされているウェットな黒髪を観察する。
この臭い......ポマード?今時、ワックスとかじゃなくて、ポマード?

このポマードヘアの主は、目を細めながらイヤラシソウに微笑む。
「いやあ、予想以上におキレイな方ですね~。なんか、緊張で死んじゃいそうですよ。」

死ね。
イね。

でも、折角パレスハイアットの最上階までわざわざ出向いてやったんだから、食事“だけ”して帰ろう。

何が、「モデルの経験あります」だ。
パン〇ースの広告でか?

何が「長瀬〇也似です」だ。
長瀬君100キロ太らせたらだろ?

食事は、窓際の席で優雅に食べた。
...ってのは大嘘で、一気に食べた。

そして、全ての質問は
「はい」と「いいえ」だけで切り抜けた。






......寂しかった。
独り寂しく帰宅して、リビングのソファに横になる。


数ヶ月前、1年間付き合っていた彼氏に二股かけられ浮気された挙句、捨てられた。

もう、結婚まっしぐらだと勘違いしていたあたしは、再起不能に近いダメージをくらった。

合コン、コンパは楽しいけれど、あたしは本物の関係に飢えているんだと思う。
その点、ネットで出会う男達は、コンパとかの連中より多少本気(マジ)な関係を求めているんじゃないかと思っていた。

まあ、出会う場所が場所だけあって、チャットしていてポルノのスカウトマンだと判明したり、デート中にコソコソ頻繁にトイレに行ってメールチェックしている彼女持ちの男とか、やりたいだけの種馬マンとか、怪しい奴も多かったけど。

「はあーっ」
と溜息をついて、バックの中から携帯を探し出す。

『ハズレでした』
手早くメールを打つと、陽子から
『当たり前じゃ!コリないのかあ!』
と1分もしない間に返事が来た。

今度は直接、本人に電話をかける。
「相変わらず、キツイよ陽子さん」
「だから言ったじゃん。“モデル経験あり”ってヤバイよ。ヘアカットモデルだった?やっぱし」
「いや...多分赤ちゃんの頃モデルだったんじゃないかと...。」
「きゃはははは!それサイコー!見た目は?」
「パパ〇ヤ鈴木がえなり〇ずきみたいな髪型とファッションした感じ」
「ぶはっ!!!いいねえ。最高。で、なにしたの?」
完全に、面白がられてるよ。

でも、陽子と会話が出来て、少しだけ心が軽く感じる。

「食事だけ。パレスハイアットの上のイタリアン」
「うそ?!超絶景じゃん」
「でも、割りかんさせられた」
「ゲーーーーー最悪そいつ。ケチだねぇ。でも、夜景が見れただけ良かったジャン」
「慰めになってないっつの!」
「もう辞めなよー。ネットデートなんて。あたし水名子に何かおきるんじゃないかと、不安で不安でさぁ」
「うーーーっ。大丈夫だとは思うけどね」
「何で、そんなに焦ってんの?」
「焦ってないよ、別に」
「いんや。焦ってる。焦ってるようにしか見えないよ。失恋したからって、新しい恋で紛らわせようと思っても、ぜーったい無理だよ」
ううっ...ある意味図星...。
「何ていうか、暇つぶしだよ」
「ふうーーん」
明らかに不納得そうに、電話越しに溜息をつく陽子は、「そうだ」と言って話題を変えた。
「そういえば、今日弟から電話で聞いたんだけど、あんたん家の隣の太郎君、東京のW大に行く事に決めたみたいよ。明日あたりニュースになるんじゃない?」
「うそ、マジ?」
陽子とは地元の高校からの腐れ縁(=親友)で、同じ土俵(=東京)で頑張っている勇志だ。
彼女の弟は、まだ地元の高校に通っている。
そして、あたしの子分であり弟分の太郎は、8つ年下のご近所さんだ。
「推薦全部蹴って、やっぱ東京に出てくるって。太郎君、地元のヒーローだから、町も寂しくなるね、きっと」
「いや、静かで平和になるんじゃないか?」
言いながら、PCの前に移動して電源を入れる。
「だって、超無名だったうちらの母校の名前一気に全国に知らしめたんだよー?17歳でオリンピック代表になって、メダル取っちゃう子なんだよーーー?地元に名物タロウ饅頭とかまで出来ちゃった子だよ?」
いや、興奮してますよ...陽子さん。
「ああああーーー!!地元居た時は、あんたの後金魚のフンみたいにくっついて歩いて、ちょっとあほの子だと思ってたんだけど、結構なんかカッコよくなってきてるじゃん。あの逆三角形の体、サイコーよ!」
「はあ。」
陽子はちゃんとTV観てるのね。
「それより、弟君は元気?彼はどうするの?」
いつものように、ホットメールを何気なく開く。
「ああ、隆志は駄目駄目。浪人だよ。」
見慣れない、“AQUAMAN7"とか書かれているメルアドから1通受信があった。
「でも、隆志君頭いいし、国立とか狙ってるんじゃないの?」
とりあえず、無題のそのメールをクリックしてみる。

文字は一言。しかも、全部ひらがな。

『みーなへ
とうきょうのだいがくにいくぞ
たろう』

とだけ、シンプルに書かれてあった。




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